責任共有モデルという言葉に違和感を感じる
責任共有モデルとは
クラウド関係の仕事をやっていると責任共有モデルという言葉が時々出てきます。
これはクラウドを使ったシステムのセキュリティやコンプライアンスについて、この部分はクラウド側で見るけどこっち部分はユーザで見てね、と責任の所在をはっきりさせたものです。
当然、クラウドベンダとしてはユーザの設計やアプリのせいで起きた事故の責任を負うことはできませんし、ユーザとしてはクラウド側のバグやエラーに対して責任を持てません。
こういう責任の分割が行われるのはよく理解できます。
(図は上記のリンクから引用)
この言葉の初出はよく知りませんが、調べると真っ先にAWSが出てくるのでAWSじゃないでしょうか?
責任共有だけで調べると金融関係のサイトがたくさんでてくるのでそちらが先かもしれません。
何に違和感を感じるか
共有という言葉と実際の定義が合ってないように見えるところです。
共有と書いているのに実際は責任の所在を分割しましょうという内容です。
クラウドとユーザで共有している責任はひとつもありません。
だったら責任分割とか責任分散でいいじゃないですか。
もちろん1つの大きな責任を共有してお互いの担当範囲を決めただけ、という解釈も可能ですが、 かなりこじつけ感があります。
責任共有という名前はどこから
これはshared responsibility の訳です。
shareは共有すると訳すので妥当に見えますね。
本当にそうでしょうか?
ここで今一度shareの意味を辞書で調べて見ましょう。
1. a 〔+目的語(+out)〕〈…を〉分ける,分配する. b〔+目的語(+out)+with+(代)名詞〕〈…を〉〔…と〕分ける. c〔+目的語(+out)+前置詞+(代)名詞〕〈…を〉〔…の間で〕分け合う,分配する 〔among,between〕 2. a〈ものを〉共有する; 〈費用・責任などを〉分担する; 〈意見・苦楽などを〉共にする. b〔+目的語+with+(代)名詞〕〈…を〉〔人と〕共有する,共にする; 〈…を〉〔人に〕語る,披露する.
確かに共有するという意味もあるのですが、分ける・分配するという意味の方がメインです。
考えてみると情報など減らないものを除き、shareというのは分けることを意味していることが多いように思います。
食べ物をシェアするということを食べ物を分けるといいますが、食べ物を共有すると言う人は多くないんじゃないでしょうか。
time-shared controlは時分割制御ですし、Secret sharing method は秘密分散法です。
「A社のマーケットシェアが30%」と言うときも、「市場全体を1と見て、そのうちの30%がA社に取り分けれている」ということですよね。
こういうふうにshare=分けると考えると
shared responsibility = 分割された責任
です。
この意味ならこのモデルにマッチしてますね。
結論
多分訳が悪いのだと思います。
この名前は5年くらい使われており今更この訳が改められることもないと思うので、
責任共有モデル=責任分割モデル
と頭の中で変換して乗り切りましょう。